第24話 正しい

何になりたいと訊かれたら答えに困る。だが、なりたくないものはたくさんある。総じてダサい大人にはなりたくない。年取って若い頃に戻りたいみたいなことは絶対に考えたくない。

目を光らせて朝からバイトした。平日日中だからか、老人と主婦からしか電話が来なかった気がする。老人は頭がカタイ。話していて疲れる。電話のバイトで、人に申し訳なさを伝える術と、ものははっきり言った方がいいことを学んだ。相手のペースに飲み込まれちゃいけないことも学んだ。多分普通のバイトじゃ学べないことを学んだ。早くやめたいが。

限りなく透明に近いブルー読み終わった。終始、麻薬とセックスにまみれたロクデモナイ光景を、冷めた目線でフィルター越しに眺めているような気分だった。今、目の前で起こってることなのに、手の平から流れ落ちる砂のように一瞬で過去に変わっていく感覚だった。別に麻薬やっていなくても、時間とは砂のようなものなんだ。そう考えると砂時計がこの世に存在する理由も納得する。みんな分かってるんだ、時間は砂だ。思い出は砂場だ。恐らく、今という瞬間が砂のようなものだと実感するのが怖くて、人間は過去にしがみつこうとし、先のことばかり考えているのかもしれない。だが、事実として、目の前には今という瞬間しかなくて、今という瞬間は砂のようなものだ。

12月になるのがとても怖い。そう思ってたら12月になっていた。
刻一刻と22歳に近づくのもとても怖い。特に自分の中に住む16歳の自分がとても怖がっている。あの頃は、自分がそのうち22歳になることなんて少しも考えなかった。そもそも暦というなんとも便利なシステムがあるだけで、時間は循環しているわけではない。常に一方通行だ。


チャンチャン。